出版社: 中央公論美術出版 1994年刊
360頁 , 図版多数 , オールモノクロ , 15.6×21.7cm
ハードカバー , 日本語
「ヨーロッパの彫刻史は石彫の歴史である。」 という基本姿勢のもと、ルネッサンス期を中心に古代から現代までを、その制作技法的側面に光りを当て俯瞰してみせた名著。
古代ギリシャのクラシック期以前のアルカイックな技法からドリルの多用により複雑な造形へと向かう彫刻史を、歴史的、あるいは具体的に作家の作品を取り上げ、豊富な図版でもって解き明かしてくれています。
なかでもミケランジェロがドリルを用いた合理的な立体造形よりは、よりアルカイックに近い <浮き彫り> に重きを置き、土地の恵みの柔肌の大理石に <櫛ノミ> を用いて過剰なまでに肉々しい生命体を彫り込む様を、未完の作品から読み解き描き出す件は秀逸です。
また、著者により 「ヨーロッパの彫刻史ほとんど唯一の例外」 として語られるロダンのモデラーとしての資質を、ミケランジェロのそれと対比的に興味深く語られていたりなんかもします。
オトグス・スタッフの知る限り、ルネッサンス期を中心とした彫刻の技法的側面について詳しく日本語で読めるのはこれだけ (他にあったらゴメンなさい) のオススメの一冊です。